ハルの家に着く頃にはすっかり日も暮れ、辺りは暗闇に包まれていた。
 宿屋の明かりが明るく浮かび上がって見える。
 ハルの喜ぶ顔を想像しながらカズイがそちらに向かって足を進めていると、暗がりから女の人に声を掛けられた。
「あの………、商人の方ですよね。……この子をよその国へ連れて行って下さい!お願いします!」
「え?」
 母親と思わしき女の人はカズイの髪を確認すると、お金が入っているのであろう袋と小さな子供をカズイに突き出した。
「どうかあわれなこの子を…、”運命を間違えた人”をこの国から連れ出してやってください!お願いします!」
「いや、あの、私は…」
「お願いします!お金が足りなければ後で必ずお支払いします!だからこの子を、どうかこの子が幸せになれる他の国へ連れて行って下さい!」
 急な事に何が何だか分からずに慌てるカズイに、女の人は一方的に言い募り、お金の袋をカズイの手にぐいぐい押し付けてくる。
 一体何を言っているのか意味が全く分からないが、このまま袋を受け取るのはまずいと思ったカズイは女の人の肩を掴み正面から顔を見た。
 落ち着かせる様に一呼吸置いてから、相手の目を見てゆっくりと話し出す。
「落ち着いて下さい。私は商人ではありません。だからお子様を預かる事は出来ません。すみません。」
「ぇ……」
 女の人が声を無くし、目を大きく見開いてカズイを見詰めた。
 子供は女の人の後ろであどけない顔をして母親の服の裾を握っていた。
「事情は分かりませんが、子供は親の元に居るのが幸せだと思いますよ。だからどうかお子さんを手放す様な事はしないで下さい。」
 カズイが優しく諭す様に笑みを浮かべると、それまで無言でカズイを見詰めていた女の人の表情が変わった。
「あ、あなたに一体何が分かるの?私がどんな気持ちでこの子を手放そうとしたか………」
 女の人は涙を浮かべながらカズイを睨み付けた。
「何も知らないくせに勝手な事を言うな!」
「っ…」
 余りの剣幕にカズイが怯んだ。
 そして女の人は泣きながら子供を抱いてその場から走り去って行った。
 カズイはそれ以上何も言えなまま、その親子の後姿を見送った。
 ”運命を間違えた人”とは一体どういう事だろう?
 初めて聞く言葉と初めての体験に、不安が広がるのを感じていた。

















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