リンは顔色一つ変える事なく視線をカズイに合わせた。
「救うとは、具体的に私に何をしろとおっしゃるのですか?」
「記憶を消せ。ハル達は勿論、それを見ていた者、知った者全ての記憶を消すんだ。」
 リンは迷惑そうに溜息を一つ零した。
「一体どれだけの人数がいると思っているのですか?」
「だが出来るだろう?」
「出来ません。」
 カズイの期待を裏切り、リンは否定の言葉を吐いた。
 カズイの頬がピクリと跳ねた。
「出来ないだと?」
「そうです。出来ません。」
 カズイの顔が怒りで引きつる。
「まず人数が多過ぎます。そして時間が経ち過ぎています。目撃者が多く、その者達から噂は既に流れてしまっています。そして一番の問題は、この国から出てしまった者がいる事です。私の魔法は別次元までは届きません。故に、全ての者の記憶を消去する事は不可能なのです。それともう一つ、願いを叶えるのは一度きりと約束した筈です。二度目はありません。」
 壁に押し付けていたカズイの腕から力が抜け、だらりと下に落ちた。
 空気が喉に引っ掛かって、上手く言葉が出てこない。
「……ハル…と……マユ…は……」
「”運命を間違えた人”として、この先の人生を歩むしかないですね。」
 カズイが拳を握って、リンの顔のすぐ横の壁に叩き付けた。
 リンの感情の無い冷たい言葉が許せなかった。
 カズイは潤む瞳で人形の様なリンの顔を見詰めた。
 こんな時でもその容貌が眩しい程に美しくて涙が出てくる。
 カズイは握った拳の爪が食い込む程に強く力を込めた。
「…ハル達を助けたいんだ……。頼むから力を貸してくれ……」
「国外への船の手配をすればよろしいですか?」
 カズイはドンと拳を打ち付けた。
「…もういい……」
 カズイはもう一度ドンと壁を叩くと、俯いたまま背中を向けた。
 すぐに立ち去らなかったのは、淡い期待を抱いたからだ。
 だがリンがハル達を助けると言ってくれるのではないかとのほのかな期待は、リンが無言でいる事によって打ち砕かれた。
 カズイは震える拳を握り締め、無力な自分に歯噛みしながら、逃げる様にその場から走り去ったのだった。
















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