彼路はそんな事ある筈がないと笑って答えるが、渚は納得しない様だった。
「でもね、彼路君。普通男同士でキスなんかしないよ。するとしたら僕達の様に恋愛感情があるか、あとは罰ゲームかだね。罰ゲームだったの?」
「そんなんじゃない!」
 彼路は少しムキになってハッキリと否定した。
「じゃあやっぱり『好き』のキスしてたんじゃないのかな?大体、なんで『練習』なの?」
 彼路は会長に説明された事を渚にも説明する。
「初めてキスされた時、会長が同性同士のキスは『練習』で回数に数えないからファーストキスはまだ残ってるって言ったの。」
「なるほどね。でもその後も『練習』してたんでしょ?」
「だって会長が隙をついてしてくるんだもん…」
 そう、自分からした事はない。いつも会長が自然にチュッとしてくるのだ。
「でも嫌じゃなかったんでしょ?」
「それは……。」
 渚の問い掛けに彼路は言葉に詰まった。
 決して嫌ではなかった。
 それどころかそうする事が当然の事の様になりつつあった。
 彼女の存在を認識するまでは。
「でももうしてないよ!」
「どうして?」
「会長の彼女に悪いから…。」
「会長に彼女がいるの?」
「あ、今は別れたらしいけど…。」
「ふ~ん。」
 渚が何かを考える様にこちらを見ていた。
「で、話が戻るけど、彼路君、会長に恋愛感情はないの?」
「え?会長の事は尊敬してるし大好きだけど、恋愛とは違うよ?」
 だって男同士の恋愛なんて、今の今まで考えた事もなかったんだもの。
「ホントに?実は僕、ずっと前から彼路君は会長の事好きなんじゃないかと思ってたんだ。勿論尊敬の好きじゃなくて恋愛の好きね。だから唯ちゃんとの事は凄く納得出来たんだ。恋に恋してたのって、本当にその通りだと思う。そして本当の恋は同性相手だったから、最初から思考が拒否してるんじゃないかなと思って、そういう恋愛もあるんだよって事を理解して欲しくて僕と航との事を打ち明けたんだ。彼路君、自分の気持ちに正直になってごらんよ。先入観で男同士の恋愛を拒否するんじゃなくて、ただ心のままに素直になってみたら、会長への気持ちは恋だと気付くかもしれないよ?もちろん、違うかもしれないけどね。」
 渚が穏やかに、そして諭す様に言い募る。
 彼路は渚の言葉に動揺し、上手く思考が働かなくなっていた。
 会長に恋心を抱くなんて事があるのだろうか?
 彼路は自分自身に問い掛けるが答えは出ない。
 そんな彼路に渚が尚も畳み掛ける。
「会長からは彼路君スキスキオーラ全開なんだけど?」
「え?そんな事ある訳ないじゃん!」
 渚に会長の気持ちまで言及されて、彼路は驚きを隠せない。
「そうかな?独占欲強そうだけど?」
「それは……」
 それは唯一の友達として、ペットとしてだ。
 可愛がって貰っている自覚はあるが、それは恋ではない。
 現に、会長には彼女がいた。
 もし、彼路が会長に恋愛感情を持っていても、会長は絶対に彼路に恋愛感情は抱かない。
 会長への恋心は絶望しかないのではないか?
 失恋決定の恋なんてしたくない。
 彼路の考えがそこに至る頃、渚が笑顔で呟いた。
「まぁ、二人の事は二人にしか分からないよね。余計な口を挟んでごめんね。あ、それから、僕と航の事は内緒にしてね。」
 渚が笑顔でウインクを寄こしたので、彼路もまた笑顔で頷いた。

















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