「ただいま。織田、お客様をお連れしたよ。」
「こんにちは。おじゃまします。」
「こんにちは。いらっしゃいませ。どうぞ。」
皆がそれぞれ挨拶し、家へと上がっていく。
彼路の体の事や家の事情は簡単に話してあった。
リビングに着くと、渚が織田に何かを手渡した。
「今日は朝からお邪魔してすみません。これ、僕達からの御土産です。どうぞ。」
「わざわざ有難うございます。」
「あの、僕達買い出ししてきたので、織田さんは気を遣わずにゆっくりお休みになっていてください。勉強の場所を提供してもらっただけで十分ですので。」
その言葉を聞き、織田は笑顔になって彼路を見た。
「それじゃあ、御言葉に甘えて下がらせて頂きます。部屋にいますので、何かありましたら声を掛けて下さい。では、皆さん、勉強頑張って下さいね。」
織田は嬉しそうに自室へ戻って行った。
昨日といい、今日といい、いつもにも増して御機嫌だ。
織田がいなくなると、皆は買ってきた品物を広げだした。
渚は紙コップに皆の飲み物をつぎ、勇人は早速ポテチの袋を開けている。
航だけは持ってきた勉強道具を出している様だった。
「昨日、会長に何教わって来たの?」
渚が紙コップを手渡しながら聞いてくる。
「あ、過去問を解いて、重要なポイントを教えてもらったんだ。」
「え、過去問なんかあるの?ラッキー!」
勇人がポテチを頬張りながら、嬉しそうに口を挟む。
彼路はコピーしておいた皆の分のプリントを持ってくる。
三人は受け取ったプリントをチェックし、それぞれ苦手科目を重点的に勉強する様だ。
お菓子を食べながら。
彼路は今まで、何か物を食べながら勉強をした事など無かった。
だから、三人の行動に唖然とするしかなかった。
呆然と三人を眺める彼路に、勇人が不思議顔で尋ねる。
「なぁ、彼路は勉強しないの?」
「え、あ、するよ。」
「お菓子は何食べる?」
「……」
「ポテチはやっぱノーマルなうす塩がお薦め。あと、チョコとかアメとかもあるけど、どれが良い?」
「…僕は今はいいよ。後でもらうね。」
「あれ?もしかして食べながらは勉強しない人?」
三人が一斉にこちらを向いた。
「あ、うん…」
「ごめん、俺達いつもこうやって勉強してたから、ついいつもの癖で…」
「あ、ううん、気にしないで。僕、友達と一緒に勉強した事って無かったから、こんな風にするの初めてで、ちょっとビックリしただけだから。」
気まずそうに彼路が俯き加減でつぶやく。
だけど勇人は気にした風も無く、明るい笑顔で返す。
「じゃあさ、こういう食べながらの勉強にも挑戦してみなよ。きっと楽しいと思うよ。」
三人が優しい瞳で彼路を見守っている。
何事もチャレンジだと決心し、彼路は机の上のお菓子に手を伸ばす。
「それじゃあ、アメを一つもらうね。」
「そうそう、その調子。」
その場にいる全員が笑顔になり、みんなでお菓子を頬張る。
彼路は勉強に集中できるのか疑問に思いながらも、楽しんで行う勉強を体験するのだった。
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