二人は暫く談笑している様だった。
笑い声や話し声は聞こえないが、二人の楽しそうな雰囲気は伝わってくる。
彼路は隠れて二人を見ている自分が虚しくなり、その場を立ち去ろうとした。
それでも目はいつまでも会長を追い掛けていた。
そんな彼路の視界に信じられない光景が映った。
会長が彼女の肩に手を回し抱き寄せたのだ。
彼路はその場に固まり、二人から視線が外せなくなった。
二人は親密そうに寄り添い、どこかに向かって歩き始めた。
彼路はふらふらと二人の後を追う。
そして真っ白になってしまった頭を働かせ、一所懸命考える。
恋人ではない男女が肩を組んで寄り添うのは普通の事なのだろうか?
あんなにピッタリと体を寄せ合わせて歩くのは一般的な事なのだろうか?
彼路は会長と外であんな風に寄り添った事など無かった。
これが男女の差なのだろうか?
彼路は何だか悲しくなり、二人の姿が涙で滲んで見えなくなってきた。
それでも二人の後を追う事は止められずに、二人だけを見詰めて歩き続ける。
何も考えられず、ただ会長を追い掛けたのだった。
彼女が嬉しそうに指さしている事に気がついた。
いつの間にか二人は歩みを止めていた。
彼路も歩みを止め、周囲を見回して驚愕した。
そこはいわゆるホテル街だったのだ。
二人が何故こんな所に?
理由なんか一つしか思い付かなかった。
だが会長の事だから何か理由があるのだと信じたかった。
だけど、彼女に手を引かれ、会長がホテルに入って行くのを黙って見ている事は出来なかった。
それまで隠れる様に身を潜めていた彼路だったが、二人の間まで走り寄り、繋がれていた手を断ち切る様にして会長に話し掛けた。
「会長、こんな所で何をしているんですか?」
「彼路っ!」
「ちょっと、あなた、何なの!?」
彼路のいきなりの出現に驚く会長をよそに、彼路は彼女に肩を掴まれて振り向かされた。
そしてそこで彼女の顔を見て、新たに驚きの声を上げた。
「咲紅良っ!?」
「お兄ちゃん!?」
「…お兄ちゃん……?」
三人三様に驚きの声を上げ、顔を見合わせたのだった。
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