それからも不定期ではあったが”メイ”からの荷物が届く様になった。
毎回植物標本と簡単な近況を記した手紙が入っていた。
この手紙が『楽しい』から『帰りたい』に変化していくのを私は楽しみに待っていた。
だがいつまで経っても変化は起こらなかった。
それどころか、植物研究の仕事は毎回新たな発見があり忙しいほど順調だし、マグヌスと二人で初めての土地を訪れ人々と触れ合うのはとても新鮮で楽しいと、手紙は益々の盛り上がりを見せた。
手紙を手にして私は思う。
こんな筈では無かった。
すぐに根を上げ帰って来ると思っていたのだ。
『恋』なんて一時の気の迷い。まやかしに過ぎない。
蜜月なんてすぐに去り、きっと旅に出た事を後悔する時が来る。
泣きながら許しを乞うて帰って来る日が来るだろうと思っていた。
だがら無意識ではあったが身代わりを自分から名乗り出たのだ。
そしてその時、お前の居場所はもう無いのだと思い知らせたかった。
私と同じ苦しみを味わわせたかった。
だが私の思惑とは裏腹に、アキは新しい生活に慣れ、それを謳歌している。
一方私は待望の”アキ”と言う立場を手に入れて喜び絶頂の筈なのに、喜びなど微塵も感じない。
苦しさが増える一方だ。
こんな筈では無かったのだ。
私は手にしていた手紙を握り潰して捨てた。
そして時は静かに流れて行った。
アキが帰国する気配など微塵も感じさせずに。
いつしか私は立派な皇太子として認められ、妃であるサオリが身籠ったと知った。
子供が生まれれば私は国王となる。
偽りの国王の誕生となるのだ。
こうなる事を願っていた筈なのに心は満たされない。
アキの苦痛に歪む顔が足りないのだ。
私はアキの不幸を願わずにはいられない最低な人間に成り果てていた事に気付き愕然とした。
※ランキング(2種類)に参加しています。
それぞれポチっとして頂けると、嬉しいです♪
1日1クリック有効です。
にほんブログ村
小説(BL) ブログランキングへ
ありがとうございます♪
※web拍手(ランキングとは無関係)もつけてみました。
こちらもポチっとどうぞ♪
こちらは1時間に10回くらいポチ出来るみたいです?
※アルファポリスにも参加してみました。
※作者のつぶやきが見たい方は、続き↓からGO!続きを読む